コンピュータ言語ではなぜ×が*で÷が/なのか。 その2

理由その2
コンピュータで使用する文字コードに×÷がなかった。

文字コードというか符号化形式としては元々電信用の符号があった。
電信機はキーボードでテープに穴を開けていたが、文字の使用頻度が多いほど穴の数が少ないようになっていた。
テープの穴を二進数と見なした場合、電信機用の符号の並びとアルファベットの並びは一致していない。
電信用としては初期は 5 ビット符号で Baudot、Murray といった符号があった。
これらを見てもやはり +- はあっても×÷はない。電信で使うような文章で乗算除算が入る事はまずないと思われるのでこれは妥当であろう。
1931 に CCIT の制定した国際電信アルファベットは二通りあるが、やはり +- はあっても×÷はない。

今使用されている Unicode の 7 ビット部分については ASCII がベースである。
ASCII(American Standard Code for Information Interchange)
1960/10/4 標準化開始。当初は 6 ビットで考えていたが不足とみて 7 ビットに移行した。
1961/11 最初の ASCII 規格案ができ、平行して ISO が 1962/5/4 に 6 ビットと 7 ビットの文字符号作成を決定した。
1963/3/29 に ECMA 6ビット符号 制定され、1963/6/17 7ビット符号の ASCII が制定された。
※ただし 1963 の ASCII は現在の ASCII と比べると、英小文字がない、^ が↑等の違いがあったらしい。1967 に修正された ASCII が現在のものと同じのようである。
電信用コードとは異なりコンピュータ使用も念頭に置いて制定されたため、ソート等の用途を考えアルファベットの実際の並びと同じになった。
しかしながら一般的な文章で使用されない | やバックスラッシュが採用されたにもかかわらず、×÷は採用されなかった。
他の文字コードとして、IBM が制定した EBCDIC(Extended Binary Coded Decimal Interchange Code) というのもある。
これは 1964/4/7 System360 発表と同時に仕様公開された。パンチカードで使用されていた BCD Binary-coded decimal ベースである。
EBCDIC の記号  .<(+&*);-/,%_>?:#@’=”  は BCD Binary-coded decimal に準じたものと思われる。当然×÷は無い。

続く

参考
安岡孝一・安岡素子著「文字符号の歴史」


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